デザインコンペは誰得?
日本では、アイデアや企画案は無償で得られるものであるとの間違った認識が今でも業界内で慣習として残っています。
印刷物やWEBサイト、動画などの成果物にはお金を払うが、その前段階のアイデアや企画にはフィーを払わなくともよいのではという考え方です。
そんな中で、コンペフィーが発生しないコンペが多く見受けられます。一見するとデザインコンペは、複数の提案が提示され、その中から最適なデザインを選べるという、開催者にとってメリットしかないように思えます。
しかし、本当にそうでしょうか。
クリエイターにとって、受注できるか保証のないコンペに参加する場合は、選ばれなければフィーが発生しない=全力のリソースを注ぐことができない と考えてしまいます。
また、成功報酬だけでなく後々の仕事につながるような、参加するだけでネームバリューが得られるコンペであれば挑戦もするでしょうが、そんなコンペは滅多にありません。
特に最近は、WEBサイトリニューアルやカタログデザインの刷新など、コンペを開催する必要があるのかと疑問に思えるような案件があります。
今の多くのコンペでは、若手デザイナーが挑戦と勉強の機会だと割り切って赤字覚悟で参加することが多くあります。
コンペ開催者側のデメリット
クライアント側は、コンペによってクリエイターたちを競合させ、より優秀な他社にはないデザインやプロモーションが手に入るのではないかと錯覚しがちです。
実際はコンペに参加する側は、デザインや企画案が採用されず他社に利用される可能性があるのではないかと懐疑的に考えたり、例えコンペに負けても他のコンペでも使い回せるようにと、無難なデザインにしてしまうケースがあります。
開催者側が、より尖った奇抜なデザインを求めていても、提案数は多いが、代り映えのしない、似たようなものばかりのデザイン案が揃ってしまうケースが発生するのは上記のような理由からです。
また、事業やサービスの概要はもとよりコンセプトや意図が伝えられず、要件定義だけを伝えてプロに任せるといった場合、クリエイターは意図を読み取る時間が無くビジュアル面だけで何とかしようと考える場合もあります。
逆にコンペ主催者が意図している部分を深読みし過ぎて、的外れなデザインが出揃うケースもあります。
更に悪質な場合は、コンペのプレゼン資料はエースデザイナーが作成するが、実際に採用した後の対応は新人デザイナーが担当し、進行に応じての変更や修正はコンペの時のような品質ではないといったケースもあります。
また、先ほどお伝えしたように、クリエイター側は他のコンペでも使いまわせるようなデザインにしている場合が多く、参加者に競わせ多くの提案を吟味し決めているようでも、実際は通常より高い金額で他社のボツ案件を買っているだけの可能性もあるのです。
このように、コンペには時間と手間をかけて実施する割にはデメリットが多いということが言えます。
クリエイターのモチベーション維持
コンペでは、クリエイターは参加時点で既に仕事をしています。
つまり採用されなければフィーが発生しないコンペでは、2位以下の参加者にはタダ働きを強要していることと同じなのです。
より良いデザインを欲するならば、本来はある程度のスキルをもったデザイナーとしっかりコミュニケーションをとりながら進行し、満足のいく水準のものを共に作り上げていくことが理想です。
タイトなスケジュールの場合は特に、複数のコンペ参加社と各々打ち合わせをして要件定義を伝えるよりも、その時間を使って信頼できるクリエイターと深く濃い打ち合わせしていく方が、必ず良い結果に結びつきます。
優秀なクリエイターはクライアントとの綿密なコミュニケーションから質の高いデザインが生まれることを経験から知っています。
だからこそ、自身のデザインを理解してくれるクライアントと一緒に仕事をしたいと望み、共により良いモノを作り上げていくクライアントの下では、意図を汲み取ってベストなデザインに仕上げてくれるのです。
コンペは、相互のコミュニケーションツールにはなり得ません。
お互いが表面的な浅い理解のまま、質の低いデザインを多く揃え、コンセプトや意図を無視した、単なるクライアントの「好み」によるデザインを選定しているだけの作業になっています。
真の意味で、売上増に結びつく良いデザインを求めるなら、コンペではなく信頼できるクリエイターと共にプロジェクトを組んで、ワクワク感のあるマーケティングに則した仕事をしてみませんか。
ライター:6ちゃんねる