フォントのあれこれ
突然ですが、皆さんはどんなフォントがお好きですか?
かっこいい? エレガント? 奇抜な文字?
「明朝体」とか「ゴシック体」とか、見たら「ああ、wordで見たことある」というくらいで、フォントそのものについてはよく知らない人が多いと思います。その上デザインに合ったフォントなんて、到底想像つかないものですよね。
「ちょっとしたデザイン依頼のとき、もっと明確に指示ができたら…」と思っているそんなあなた。今回は、フォントメーカー最大手の株式会社モリサワが販売する「モリサワフォント」から、色々な場面で使いやすい5つのフォントをマニアックな視点で紹介していきます。
そもそもモリサワフォントって?
「モリサワフォント」とは、その名の通り株式会社モリサワが販売するDTP用のフォントのことです。デザインに携わっていない人は触れる機会がないかとおもいますが、デザイン制作に使われるようなフォントは”購入”したり、”使用権を借り”たりして使うものなのです。
これが、結構いい値段です。ただその分種類は豊富なので、クライアントさんから「もっとインパクトのある書体に!」とか「女性向けのかわいらしい感じに!」なんていう注文を受けても、デザイナーはササッとそれらしいフォントを探して当てはめてくれるのです。
①新ゴ
「新ゴ」は形の均一な現代的ゴシック体です。
飾り気はありませんが、均等ですっきりした見た目なので、縦書き・横書きのどちらでも綺麗に組むことができます。同じフォントで最も細字な「Light」から感じられるスマートな印象から、最も太字の「Ultra」から来る熱量まで、あらゆる表現をこのフォント1つでこなすことができます。
この冷静沈着な佇まいでありながら、太さを変えればなんでもこなせるオールマイティな感じがとってもオススメです!
使用例としては、ニュースのテロップなどのような「文字を読ませる」目的で使われることが多いです。またどんなサイズでも可読性が高いので、公共スペースの掲示から手の平サイズの名刺まで、あらゆる場面で使うことができます。
②リュウミン
「リュウミン」は、森川龍文堂明朝体をベースにして作られたオーソドックスな明朝体です。
このフォントは金属活字を元にして作られています。そのためハライやハネが彫刻刀で彫られたかのような美しい曲線を描き、文字の先端の墨溜まりには柔らかさを感じるデザインになっています。
この透き通るかのような曲線の美しさが、文字を並べた時の美しさを更に強調していて、エレガントなデザインには持ってこいなフォントになっています。
余談ですが、ほかのフォントと比較して太字にしたときの横幅の広がりが大きめなので、狭いスペースで使う時には注意しましょう!
③黎ミン
「黎ミン」はシンプルでクセのない明朝体です。一見して「リュウミン」となんら変わりないじゃないか!と思われる方もいるかと思います。
そんなことはありません!
よく見ると分かってくる、リュウミンとは違った暖かみのあるハライやトメ、柔らかさをもった親しみやすい曲線は黎ミンならではといってよいでしょう!
また、「黎ミン」は横画の太さを段階的に変化させた「黎ミングラデーションファミリー」を34書体も揃えているので、タイトル・見出し・本文と雰囲気を整えながらあらゆる場所で利用することができます。
この書体の多さは「世界で最もグリフ数(文字数)の多い書体ファミリー」
としてギネスブックにも登録されており、その汎用性の高さが伺えます。
④ぶらっしゅ
「ぶらっしゅ」は、先端やハライの途中にブラシで描いたようなあしらいを持つデザイン書体です。
太い線と大きめのふところで見やすく配慮されたデザインでありながら、くだけた親しみやすい印象を与えてくれるフォントになっています。
これは個人的な印象ですが、youtuberがよく動画の字幕や動画サムネイルのキャッチとして使っている印象があります。
上記の通り、動く画面の中でも読みやすく、視聴者に親しみやすい印象を与えるのに有効ということなのでしょう。
⑤すずむし
モリサワフォントを語るうえで絶対に外せないフォントの一つとして、私は「すずむし」を推薦します!
「すずむし」は、たっぷりふくよかな墨溜まりが特徴的で、通勤やショッピングなど、外に出かければ1度は必ず目にすると言っても過言ではないほど人気なデザイン書体です。
かわいらしく軽快な印象を感じるこのフォントは、漢字・ひらがな・カタカナの大きさがそれぞれ異なっており、普通の文章でも軽やかな動きを付けてくれます。
このアンバランスながらも妙な心地よさがある「すずむし」はパッケージや広告の一面を飾るタイトルなどに対して非常に効果的といえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか? ゴシック体・明朝体・デザイン書体と紹介しましたが、これは「モリサワフォント」のほんの一部にすぎません。
今回はフォントにこだわり抜く私がマニアックな視点で厳選したフォント5種をピックアップして紹介しましたが、もっといろいろなフォントがあります。
デザインというと、きれいな色使いや魅力的な画像・動画などの表現に目が行きがちですが、その中でも重要な内容はやはり文字にしてしっかりと意味を伝えたいところ。
デザインの邪魔にならないよう文字数を減らしたり隅っこに小さく追いやったりするのではなく、デザインに合ったフォント選びをすることで、よりわかりやすく、しかも美しいグラフィックができると思います。
ライター:佐々木
参考サイト
モリサワフォント書体一覧
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/passport/fonts/
「黎ミン」がギネス認定のwebニュース記事
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/586541.html
ウィキペディア「モリサワ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%AF