「InDesign」と「illustrator」3つの違い
みなさんは、「Adobe InDesign」というソフトをご存知でしょうか?
その名の通り、アドビシステムズから販売されているソフトでDTP(デスクトップパブリッシング)用のデザインツールと位置付けられています。冊子などの出版物や、小説・辞書など、テキストによってデザインされるものを作るのに適しています。
同じく、デザイナーなら誰もが知っている「Adobe Illustrator」もデザイン用ソフトとして広く知られていますが、この2つのソフトの違いはなんなのでしょうか?
知っているようで知らないInDesignの機能を、illustratorと比較しながら探っていきましょう。
その① InDesignは「箱」で管理されている!
InDesignでは画像やテキストを配置する時、最初にそれらを入れ込む「箱」を用意します。画像・グラフィック・テキストなど、配置できる全てのものがillustratorの「エリア内文字」のような扱いと言ってもよいでしょう。また、テキストを入れるための箱とグラフィック・画像を入れるための箱には互換性があるという点も見逃せません。
InDesignでは、全てのデータが「箱」という同じ規格で配置されているので、属性を変更することで簡単にグラフィックへ変換することができます。さらに、箱には最初から「箱に対する塗り色・線の色」と「テキストに対する塗り色・線の色」の設定ができるようになっています。一方illustratorでエリア内文字を使って文字を配置しても、そのフレームはグラフィックに変換することはできないのです。
これはどういうことかというと、例えば「文字の背景に色を付けたボックスを作りたい!」というような場合、illustratorだと文字のフレームとは別に色ベタのグラフィックフレームを用意するか、アピアランスの効果を駆使して色を付けないといけません。InDesignの場合、一つの箱で同時に設定できてしまうので非常に便利です。
例として、「1つのフレームで、赤ベタに白文字・ボックスの中央にテキストが配置されたデザイン」を両方のソフトで作ってみましょう。
「illustratorの場合」
2つも効果をかけているうえ「形状に変換」は、アウトライン化した際に不具合を起こしやすいのでできれば避けたいですね
アピアランスで赤と白の塗りを設定した後、赤の塗りに「形状に変換(長方形)」の効果をかけて、白の塗りに「変形」の効果で赤ベタの中央に文字を寄せています。
「InDesignの場合」
テキストとボックス両方に色が設定できるおかげで効果なども一切使っていませんし、ボタン一つで「箱に対してテキストを中央に配置」することができるので、データの複雑さも無く修正にも強いと言えます。レイアウトの中で文字の入ったデザインを多用する場合、InDesignの「箱」で管理されたデザインは力を発揮できるでしょう。
その② InDesignは修正に強い!
illustratorで冊子の原稿を制作しているとき「このページとこのページを入れ替えて!」とか「新しいページをここに追加してほしい」なんて言われたら、大変ですよね……。ページによって色味を変えていると、1つ1つ色を編集しないとといけませんし、途中にページが挟み込まれると、その後ろのページ番号も全て変わってしまうため、いちいち文字を打ち換えたりしないとといけません。それだけで済めばいいのですが、入稿前・ギリギリのタイミングに変更を余儀なくされ、ページ数も膨大だったら……ミスをしないか怖くて仕方ありません。
InDesignでは、「マスターページ」というページを使うことで、自動で数字を打ち換えてくれるページ番号や、各ページ共通のデザインをあらかじめ設定して、それぞれのページに適用することができます。新しいページを差し込んでも自動でページ番号を打ち直してくれるし、共通のデザインをあらかじめ作っておけば、一からデザインし直す必要もありません。ページ数の多い印刷物や、インデックスが複数に分かれているデザインを作る時、InDesignならもしものときも安心と言えます。
その③ InDesignは図形編集が少し苦手? でも…
これまでillustratorよりInDesignが優れている点のみを紹介してきましたが、もちろん弱点もあります。InDesignはillustratorのような高度な図形編集には適していません。複雑な形のオシャレなグラフィックや、テキストをアウトライン化して変形させるなどの図形編集能力は圧倒的にillustratorの方が上です。
しかしながら、両者は同じアドビシステムズの製品。それぞれのソフト間での強力な互換性を持っています。InDesignではPhtoshopやillustratorのデータを、元データのまま配置することができます。Photoshopで加工した画像も.epsファイルに変換する必要はないし、illustratorで作った高度な図形データを「元の.aiデータのまま」画像のように配置することもできます。もちろん、配置したデータの内容を変更すればInDesign上でも変更されるので、いちいち新しく画像を書き出したり、配置し直す必要もありません。すごい!
まとめ
いかがでしたでしょうか?InDesignは文字を組みやすいソフトというだけではなく、丁寧に設定をしていれば修正に対して非常に強くなり、他のアドビ製品との連携でより良いデザインを作り出すことができると理解していただけたのではないかと思います。使い慣れているツールをついつい選びがちですが、適材適所で使い分けることで、より便利で快適なデザインライフを送ることができるのではないでしょうか。
これを機会に、是非InDesignも覚えてみてくださいね!
PN: 佐々木