デザイナーに必要なものは一体なんでしょうか。
デザインソフトを使いこなす技術、美しい配色やレイアウトをするデザイン能力、もちろんこれらは必要不可欠なものです。
しかし、今回は敢えてそういったものと少し見方を変えて、身につけるスキル以前にデザイナーが持つべきもの、素質に注目したいと思います。
「デザイナー」にどんな印象を持ちますか?
職場や友人関係など、身近に「デザイナー」がいる人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
デザイン業に従事している人は、全業界で0.3〜0.4%と、どちらかというと少数派なので、あまり関わりがないという人の方が多数派だと思います。
そういう場合、デザイナーと言われて漠然と浮かんでくるのは、メディアで取り上げられるような有名デザイナーではないでしょうか。
芸術家気質で、自分に自信があって、ポジティブで、プレゼンテーションが得意で、積極的な人というようなスマートなイメージがありますよね。
こういったステレオタイプな「デザイナー像」があると、デザインを学んでいる人は「内向的な自分はデザイナーに向いていない」と思ったり、デザインを依頼する人も「素人の自分がそんなデザイナーと話すのは緊張する」と思ったりするかもしれません。
しかしそんなメディアで取り上げられ、芸能人のように立ち振る舞うデザイナーでも、当然ですがひとりの人間です。
実際は大きな不安を抱えていたり、内心すごく緊張していたりします。またメディアには登場しない、デザイン会社に勤めるサラリーマンデザイナーや学生デザイナーの中にも、人の心を動かすすばらしいデザインを生み出す優秀なデザイナーはたくさんいます。
ただそういう優秀なデザイナーは派手な人ばかりではなく、大人しかったり、人見知りだったり、さまざまです。
きっとみなさんがイメージしている「デザイナー」とは印象が違う人ばかりではないでしょうか。
つまり、外交的か内向的か、自信家か心配性か、そういう点でデザイナーの優劣が決まることはないのです。
大切なのはそこに「優しさ」があるか
以前の記事(「デザイン」と「アート」の違い、説明できますか?)で、デザインは「問題解決」と記しましたが、その力を発揮するのにまず必要なのは、想像力です。
ただそれは芸術家のように「神が降りてきた!」なんていうひらめきの想像力ではもちろんありません。「
相手はこういうことに困っているのではないか」「こうしたら喜ぶ人がいるのではないか」という思いやりの想像力です。
その想像力には、多くの人は見落としてしまうような些細なことにも気がつく力や豊かな感受性が不可欠です。
全てのデザイナーにとって、そしてデザインのセンスやスキルといった技術以前に必要なものです。
どんなにソフトを使いこなせても、美しい色使いができても、相手の悩みに共感し、もっと良くしてあげたいという気持ちがなければ問題解決にはたどり着けません。
良いデザインにはデザイナー自身の「優しさ」が必要です。
自信満々でスマートに見えるデザイナーも、実際はその感受性ゆえに悩んだり、傷つきやすかったり、落ち込んでいたりするものです。
そう思えば、デザイナーが身近に感じますし、これまでは少しとっつきにくいと思っていたデザイナーが、問題解決まで一緒に悩んでくれるパートナーとも言えます。
優しさを忘れないこと
スキルは経験を重ねれば身につくものですが、優しさに初心者もベテランもありません。
たとえ経験の浅い新人デザイナーでも心構えひとつで優れたデザインをつくりあげることができます。
またプロのデザイナーに仕事を依頼するとき、依頼する側もそんなに緊張することはありません。
だってデザインの世界で仕事ができている人ということは、ただ人よりちょっと細かいことに気がつける、普通の人だということなのですから。
ライター:名護泰樹