フォントの決め球。それは「フォーク」!
「速球とフォークが使えるピッチャーはメジャーリーグで大成する」とは、野球ファンの間で語りぐさにされる俗説ですが、印刷物を手掛けるデザイナーの中でもよく使われる「フォーク」があります。
デザイナーを引きつけるフォークとは一体なんなのか、今回はモリサワフォントの「フォーク」について深掘りしていきます。
フォークと丸フォーク
この「フォーク」はモリサワフォントより販売されているオリジナル書体です。
明朝体のように細い横画と太い縦画で作られていて、クールな雰囲気を感じさせます。
比較的シンプルにまとめられた書体でありながら、横画と縦画が織り成すコントラストが印象深く、読み手に新鮮さを与えています。
さらに、この「フォーク」には親戚とも言えるフォントがあります。
この「丸フォーク」は「フォーク」を元に作られた書体です。フォークの良さはそのままに、先端を丸くすることで、明るく柔らかい印象を持たせています。スマートな印象が強いフォークに対して、ポップな印象が新たに加わったことで、この2フォントだけでさらに幅広い表現が可能になったと言えます。
この2のフォント、街中で結構使われています。パッケージや広告・看板など、意識してみれば「フォーク・丸フォーク」を見ない日は無いといっても過言ではないくらいに使われています。
ではなぜ、フォークはそんなにたくさん使われるのでしょうか。他のフォントと比較してみましょう。
使い勝手をマトリクス図で考える
ところで、内容にあったフォントを選ぶ時はどうするべきでしょうか?
私の場合は、フォントが持つ印象をマトリクス図に落とし込み、そこから最も適したフォントを選ぶのが良いのではないかと思っています。
上の表では、書体をクール・キュート・シンプル・デザインの4方向にあてはめ、どういった印象があるかまとめたものになっています。
新ゴのような飾り気はないが、癖のないフォントはクール・シンプル寄りに。
すずむしのような可愛らしくおしゃれなフォントはキュート・デザイン寄りにというように、書体の持つ特徴を把握していると使うべきかどうかの判断を素早く導き出せます。(上の表は、あくまで一例です)
そんな中で、私の思うフォークと丸フォークの位置付けはこのようになっています。
この2つのフォントがたくさん使われる理由は、2つあると考えられます。
1つ目は、あらゆるジャンルで使えるに守備範囲の広さがあるという点。
まず「フォーク」についてですが、先に述べた通りクールな雰囲気が高級感を出す役割を果たしたり、清潔感のある印象が診療所や歯科医院といった医療機関との相性を良くしています。
また、そのシャープな印象が清涼感ある商品とも相性が良く、食品や飲料の広告・ケア用品などにも扱いやすいです。
上記のように、一見して飾り気のないデザインでありながら、縦画と横画の美しいコントラストによってデザインを華やかにすることができるので、あらゆるデザインの中に落とし込むことができます。
「丸フォーク」はフォークではカバーしきれなかった、親しみやすさや可愛らしさといった印象を持っており、全体的な雰囲気を柔らかくすることができます。
丸フォークもフォークと同じジャンルで扱うことができ、その中で親しみやすい印象を与えたい時に使うと効果的だといえます。
そして2つ目の理由は「シンプルとデザインのちょうど中間」に位置しているという点。
伝えたい重要な部分を目立たせたいが、デザイン書体を使うと逆に読みにくくなったり、伝えたい印象と違ってくる場合があります。フォークや丸フォークを使うことで奇をてらわず、それでいて他の情報より必ず目立つという、ちょうど中間くらいの視覚的な違いを見せることができます。
この2つの理由が相まって、「フォーク」は様々なジャンルで幅広く利用されるフォントになったわけですね〜。
まとめ
いかがでしたでしょうか。どうにかして変化をつけたい、自然に目立たせたい時のデザイナーの決め球「フォーク」と「丸フォーク」。それはまさにメジャーの大投手が投げるスプリット(※1)のようにピンチを制し、消費者の心を動かすことができるでしょう。
ライター:佐々木
(※1)速球に近い速度で、小さく落ちるフォーク。スプリットフィンガー・ファストボールとも。
引用元:モリサワフォント:書体見本
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1431
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1283