前回の記事では、コピーとはなにか、基本的な定義についてご紹介しました。今回は、具体例をご紹介しながら、よいキャッチコピーとは一体何か? をご紹介できればと思います。
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よいコピー、悪いコピー
多くの人がキャッチコピーとはおしゃれなだけのフレーズだと勘違いしているようですが、それは世の中に悪いコピーが溢れかえってしまっているからと言っても過言ではありません。かっこいいだけで効果のない言葉は本来キャッチコピーではないのです。それでは、よいキャッチコピーって? どういう条件が揃えば良いコピーなの? 今回は、良いキャッチコピーの鉄則とも言える重要な要素2つをご紹介したいと思います。
1 褒めすぎない!
まず挙げられるのが、「商品・サービスを褒め殺さない」ということ。キャッチコピーなのだから商品の良いところを言うのは当然と思われるかもしれませんが、これは絶対にやってはならないのです。
例えば、「私はイケメンです!」という人を、あなたはどう思いますか?
「自分は優秀です」「とてもできた人間です」でも構いません。自分のことをそう表現する人に出会ったら、「うわー、うさんくさいな」「何言ってんだろ、自意識過剰」と思うのではないでしょうか。自画自賛するような人は信頼されるどころか疑われてしまいます。
キャッチコピーは広告主の言葉。そんなことは賢い消費者は理解しています。ですから、絶対に商品をべた褒めしたり、とにかく良いものだということだけを言うようなキャッチコピーではいけないのです。
「実際良い商品なんだから褒めないわけにはいかないだろ!」と、商品の開発者やサービス提供者は感じると思います。我が個のように大切な商品・サービスなら、その気持ちもよくわかります。しかし、褒めるしかないということは絶対にありえません。
たとえば、株式会社TOTOの「ウォシュレット」。今までなかった商品で、非常に衛生的ですし今ではほとんどのトイレで標準仕様となっているほど、優秀な商品であることは自明です。この商品のキャッチコピーはこちら。
おしりだって、洗ってほしい
ね、褒めていませんよね。画期的な商品、今までなかった、衛生的、そんな言葉を一切使わずに、「手は洗うのに、おしりは洗わないのって変じゃない?」「拭くだけじゃ足りないんじゃ……?」と気づかせ、「あ、ウォシュレットって必要だな」と思わせるキャッチコピーです。褒める必要はないのだということがわかりますね。
2 スペックだけを並べない
褒めないで何を書くのか。よく陥りがちなのが、「商品スペックを並べるだけ」というキャッチコピー。よく家電量販店などで目にする「驚きの大容量!」や「パワフルな吸引力」といったものです。え、これがダメなの? と思われるかもしれませんが、ダメなんです。なぜか。すごさがよくわからないからです。一般的な商品で、たとえば容量○○GBとか、吸引力○○馬力言われて、その知識がある(たとえば商品開発者の方)などは、「それはすごい!」と思えるかもしれませんが、それを実際に利用する方はそれがすごいのかどうか、わかりません。「で? だからどうなの?」と思うことでしょう。そうです。商品のスペックを伝えるのはキャッチコピーではなく説明書で十分。キャッチコピーでは、そのスペックでどう良いことが起きるのかを伝えるべきなのです。
具体例は有名すぎるかもしれませんが、初代iPodのコピー。
1,000 songs in your pocket. (1,000曲をポケットに)
スペックを一切語らないのに、どんな良い商品かがわかりますね(今の時代では1,000曲なんか珍しくも有りませんが、音楽を聴く=CDかラジオだった時代を思い浮かべてください)。当時のiPodは5GBの容量だったそうですが、ただただ5GBと言われるより、「1,000曲が持ち運べるんだよ!」と伝えた方がどれだけ魅力的でしょう。
このように、キャッチコピーでは商品特徴ではなく、ユーザーの得られる利益を書くのが重要です。
まとめ:キャッチコピーはルールだけではできない
いかがでしたでしょうか? よいキャッチコピーとはどういうものかがなんとなく伝わりましたでしょうか。しかし、キャッチコピーの世界はこんなに単純では有りません。この鉄則を守るだけでは、まだまだ真のキャッチコピーとは言えないのです。次回は、キャッチコピーをどうつくりあげていくか? 構成や考え方についてご紹介したいと思います。
ライター:ふくしゃ
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