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2021年9月1日のデジタル庁設立が決定しました。
本記事では、「デジタル庁とは具体的にどんな組織」で「どのような政策に取り組むのか」「私たちの生活・影響がどう変化するのか」について見ていきたいと思います。
前提として、デジタル化の施策自体は総務省・経済産業省・厚生労働省などの各省庁のデジタル関連部局によって進められてきました。しかし、これらは「縦割り行政」といわれるもので、同じデジタル化の政策であっても「マイナンバーカードは総務省」・「民間企業は経済産業省」・「健康保険証は厚生労働省」と、それぞれが所管する領域だけで政策を実施していたのです。
そして領域ごとに管理しているというシステムの効率の悪さが、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として特別定額給付金や雇用調整助成金のオンライン申請での対応の遅さという形で露呈しました。
この行政の対応の遅れなどをきっかけにデジタル技術を活用した働き方改革を、政府自らが実践する場として急速にすすめられ、設立前に改めて注目を集めているのです。
デジタル庁の役割とは?
デジタル庁は、行政のデジタル化を進める司令塔の役割を担います。
その役割は、大きく分けて下記の6つがあげられます。
行政の縦割り構造の見直し
縦割りによる非効率的なシステムの共通化をはかること。
国や自治体のシステム統一・標準化
ガバメントクラウド(国が用意するクラウド環境)を活用した、国と地方を介したデジタル基盤の構築。(22年度夏までに完成させる予定としています。)
マイナンバーカードの普及促進、免許証、国家資格証のデジタル化
マイナンバーカードの取得を推進するとともに、運転免許証や健康保険証等、身分証として使用できるよう様々な規格への統合。
行政手続きのオンライン化
書面の提出を求めている国の行政手続きについて、電子メールやウェブサイトなどで手続きを完了できるようにするシステム整備。
オンライン診療やデジタル教育などの規制緩和
規制緩和による遠隔教育の定着・拡充、現場支援の促進。
民間や医療・教育・防災などの準公共部門のデジタル化の支援
業種を超えた情報システムの相互連携のための標準の整備・普及や行政手続・規制の見直し・合理化等を進めることにより、民間のデジタル化を促進。
デジタル庁の設立が企業に与える影響
デジタル庁が先に述べたような役割を担うことで、国民の生活のみならず企業やその業務システムにも変化が訪れるとされています。
「ハンコレス」が一気に加速
押印/捺印業務が電子化されることで大幅な業務効率改善が見込まれます。
更には、ハンコのみならず企業-自治体間での契約書自体の電子化により、書類の郵送費や作業時間が大幅にカットすることが可能になります。
このように時間や費用面での業務効率化が期待されます。
大規模“オフィス”が不要になり「地方分散型」社会への転換
ハンコレスに始まるアナログ業務のデジタル化が進むことによって、これまで当たり前のようにあったオフィス文化の必要性が薄れてきます。
時間的・地理的制約が必要なくなった企業は土地代の高い街中に大きなオフィスを構える必要が無くなり、縮小ないしは地方へ分散することが予想されます。
これにより社会は現在の「都市集中型」と呼ばれる人口やそれに追随する幸福・持続性の偏りが是正され、企業はコストカットによる更なる商品・サービス・福利厚生による還元が可能になると期待されています。
官民連携に向けたデジタル基盤の整備
官民一丸でのデジタル基盤の整備が推進は、デジタル化があまり進んでいない中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の活性化にも繋がります。業務システムのデジタル化に伴って従来の業務にかかる時間が減少し、その分を別の業務に回すことにより、生産性向上や収益力強化を実現する企業も増えると期待されています。
企業がデジタル化を進める為に、中小企業支援を活用
官公庁が主体となるデジタル化システムを活用するには、企業側も社内システムのデジタル化(=DX)に取り組む必要がありますが、多くの企業が必要性は意識しつつも予算的・手間的な問題により取り組めていない現状があります。
実際多くの企業が旧来のシステムを「使い続けて」おり、企業によっては担当者の変更や退職により複雑化(=ブラックボックス化)されていることもあるそうです。
しかし、経済産業省が提唱している「2025年の崖」では現在の社会のシステムに合わない旧来のシステムを使い続けることにより企業の競争力は低下し、2025年から2030年にかけて最大年間12兆円の経済損失を生むとされています。
そんな事態を防ぐ為に、経済産業省は「中小企業デジタル化応援隊事業」(https://digitalization-support.jp/)を開始しました。
運営事務局に登録・相談することで、IT専門家がデジタル化・IT活用の問題解決支援を行っています。
最後に
日本は2020年7月に国連加盟193カ国を対象とした「世界電子政府ランキング」において14位、2020年10月の国際経営開発研究所(IMD)による「世界デジタル競争力ランキング2020」では27位という結果でデジタル後進国という扱いになっています。
(参考:ポストコロナー総務省
URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000715007.pdf)
原因はデータ設計や各省庁間のデータ連携とされています。
多くの役割を持つデジタル庁の設立がこれらの問題をどう解決し企業や国民の生活にどのような変化をもたらすのか、そしてそれらがもたらす変化に乗り遅れず対応する為にデジタル化含め今後の動きに注目する必要があります。