心の会計(メンタルアカウンティング)から見るセールスプロモーションとECサイト運用

マーケティング

 

 

 

心の会計(メンタルアカウンティング)というのは、1985年に経済学者Richard H.Thalerによって提唱された概念です。
心の口座、心の家計簿とも言われ、取得方法や用途に応じて金銭の価値と判断が変化するという心理現象の事です。
用途で口座を分けていたり家計簿をつけている方ならイメージしやすいと思いますが、一ヵ月の食費や生活費・交際費などと言った風に用途に応じてお金を分けるという行為を人間は無意識化で行っているのです。
そして、これは企業が商品やサービスを販売する際にも応用が可能です。
本記事では心の会計の具体例を基に、企業としてそれをどうセールスプロモーションに活用するかについてご紹介させていただきます。

 

1.心の会計の実験(用途による判断)

用途に応ずる価値判断、という話で言えば有名なデータがあります。
Daniel Kahnemanらによって発表されたシナリオ例題になります。
1,000円で見れる映画を観ようとする例題になります。

シナリオA

映画館でチケットを買おうとして、1,000円札をなくしていたことに気づきました。
財布から1,000円を出して当日券を買いますか?

シナリオB

事前に1,000円で映画の前売り券を買いました。
映画館に行くと、前売り券をなくしていたことに気づきました。
再度1,000円を出して当日券を買いますか?

シナリオA/Bにおいて映画を観る為には2,000円を払う必要がある、という点は変わりません。
しかしこの例題、シナリオAにおいて「買う」と答えた人は88%であるにも関わらず、シナリオBで「買う」と答えた人は46%でした。
これは、シナリオBにおいては「映画を観る用の口座」から2,000円のコストを支払うことを勿体ないと思い敬遠した、という事です。
シナリオAでは「映画を観る用の口座」は1,000円しか使われておらず、無くした1,000円札は「その他の用途の口座」だったからこそ観るという選択肢が選ばれたのです。
そしてこれは人々が明確に意識して行っていることではなく、無意識で行っている用途による「心の中の口座分け」に基づくものになります。

 

2.使われやすい用途とは?

人は無意識に用途によって口座分けをしている、というお話をさせていただきました。
用途によっては敬遠しながらも、また違う用途によっては支払いを行うこともあります。
ちなみにこれは金銭の取得方法によっても異なり、「必死に働いて手に入れた10,000円」と「ふとした拍子にギャンブルで手に入れた10,000円」では前者の方が使用に慎重になる傾向があります。
この2つの判断の根底にあるものは「勿体ない」という心理です。勿体ないと感じる心理こそが、ユーザーが購買活動を足踏みする要因となります。
そして勿体ないが最も顕著に表れる要因こそ、お金の「用途」なのです。

例えば仕事のランチ時に食べる1,500円のラーメンと、旅行中に食べるご当地の特産品をふんだんに使用した1,500円のラーメン。
同じ1,500円のラーメンであるにも関わらず、前者は「高く」後者は「安い」と思われる傾向にあります。
これは、ランチのラーメンは日常的な「食費」であり、旅行時のラーメンは「娯楽費」とカテゴリされているからなのです。
このように、ユーザーは日用品や生活必需品においては「勿体ない」と思いやすく、訴求が難しいポイントとなります。
商品を販売するにあたっては、日用品よりも贅沢品として販売する方が口座の紐は緩みやすくなるのです。

 

3.心の会計を利用するには

心の会計を使い、顧客に商品を販売するにあたって効果的なのはECサイトです。
これはECサイト上での決済の多くはクレジットカード決済や最近であれば~Payなどの所謂「キャッシュレス決済」が用いられることが理由です。
キャッシュレス決済は財布からお金を出す仕草が無いことから「お金を使っている感覚」が薄く、心の会計による無意識の口座分けが働きにくいと言われています。
ECサイトでのキャッシュレス決済の決済機能はユーザビリティ向上の他にも、心理学的な側面も含んでいるのです。

 

4.プラスアルファのECサイト施策

「贅沢品として販売する」や「キャッシュレス決済で口座分けを働きにくくする」といった施策は、「購入しよう!」とニーズが顕在化した際に非常に効果的ですが、それ以前の顧客層には少し効果の薄い施策になります。
そこで、他にECサイト運用に取り入れたい施策を幾つかご紹介させていただきます。

①タイムセール等を活用する

プロスペクト理論において、人には損失回避の法則が働くという話をさせていただきました。
タイムセール等の特定の時や場所においてのみ安くなる(=それ以外では高くなり、損をする)状況を作れば、人は損をしない為に行動に移りやすくなります。
>>プロスペクト理論の記事のカード

②選択肢を3つ用意し、高いものから提示する

人には一番高い/安いものを回避する「極端の回避性」という心理と、最初に見た金額に引っ張られる「アンカリング効果」という現象があります。
これを利用し最初に高い価格の商品を提示することで他の商品を安い(=お得・損をしない)を思わせ、選択肢を3つ用意することで「離脱」という選択肢を薄めることが可能になるのです。

 

まとめ

「心の会計」という心理学を利用したセールスプロモーションについてご紹介させていただきました。
本記事ではECサイトでの活用法についてお話させていただきましたが、この心理学は店舗などのオフラインでの把捉にも活用可能です。
ECサイトでの利用を行う場合には、ECサイトのショップ機能やレイアウト・デザイン等を見直す必要があります。
「良い商品を作れば売れる」という事が少なくなり続けている今だからこそ、「顧客がどう考えているか」をイメージした戦略が必要になるのです。

ライター:うまのお肉


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